鳥倉の事業再生Blog 経営者の人生にフォーカスした事業再生を

究極の利害調整をするコンサルタント

(本記事は、メールマガジンにて配信した内容を編集して公開しています)

 

鳥倉再生事務所は、変化を望む経営者のために事業再生をご提供します。

経営者が会社を変革するために、必要な変化を日々クライアントにお届けしています。

人生が変わる一つのアドバイスをお伝えしたいとコンサルタントを志しています。

いつの日からでしょうか、

「会社に関するどんな難問でも解決し再生へと導く」専門家と言われるようになりました。

 

そんな変化を求める経営者に事業再生のきっかけとなるような、

事業再生でのエピソードや、最新情報を中心にお届けいたします。

 

今回は『究極の利害調整をするコンサルタント』というお話です。

 

地方における旅館ホテルの重要性と事業再生のポイント

地方における旅館ホテルの重要性と事業再生のポイント 

地方において観光産業の基盤となる旅館ホテルは、地域のおもてなしを代表する顔となります。関係する分野の裾野は広く、農業・漁業・観光業・八百屋・肉屋・魚屋・リネン消耗品と多様です。また、雇用の担い手(フロントスタッフ、サービススタッフ、料理人、清掃員、ドライバー等)としても、地域経済に一定のインパクトがあります。

 

小さい町村になると町に1軒だけの場合もあり、そこを失えば観光客が宿泊で訪れることのない町になってしまいます。そうなると、その町村が観光をエンジンとして町の活性化を行ううえで大きな制約になってしまいます。それだけに、旅館ホテルの再生は地域としての一大関心事となりうるのです。

 

旅館ホテル業は従事してみると分かりますが、お客様のために尽くす大変な仕事で、朝から晩まで働き詰めになりかねない仕事です。企業として成長し、分業を確立し、サラリーマンを従業員として配置できるようになるのは、ホテル旅館業のうちの一握りであり、特に地方の旅館ホテルは、「自宅にお招きし、心づくしのサービスをおこなう」という延長線上に今もあります。しかし、それが悪いと言っているのではありません。

 

私が過去に関与した多くの旅館ホテルもまた、そのような家業として始まり、お客様のニーズを叶える事で旅館として成長、さらに温泉付きとなり、宴会場を備え、本館と別に新館も建設、さらには冠婚葬祭を扱い事業を拡大した、という歴史的変遷の上に今があるという会社も多かったです。どこの町でもこのような経緯の旅館ホテルはあると思います。

 

そのような中で、今回は鳥倉が再生に関わったとある地方のホテル旅館の案件のお話です。

そちらは先代経営者がメインのホテル旅館業以外にも赤字体質のグループ会社を作り、メインの会社から資金援助をする事により、債務肩代わり→債権放棄→財務状況が悪化→メイン会社も債務超過に転落、という道をたどりました。

高度経済成長期に大きくなった地方企業は、とかく多角化する例が多くこちらの会社もそうでした。地域の名士として、頼まれると断れないという性分も影響するのかもしれません。

 

ホテル旅館は装置産業とも言われ、「まず始めに巨額の設備投資を行い、その借金を長期で返済する」ビジネスモデルです。バブル期には、好景気を前提にした客単価を想定して巨額の設備投資を行い、不良債権化した施設も多くありました。

現在の、オリンピックやインバウンド需要を見越した旅館ホテルへの投資、個人オーナーが多い民泊への投資も、コロナ禍によって「見誤った」という意味では同じであり、過去の類例のように不良債権や倒産が発生しやすい構図にあると思います。

 

本件では、鳥倉が関わったホテル旅館も結果的に資金も人材も分散してしまい、必要な建物や設備の維持更新投資もままならず、設備が老朽化していきました。一方で地域のニーズを多角的に満たすことにより、存在は許されている感じの施設でした。

 

ホテル旅館のマネジメントにおけるポイントは、「減価償却費を次の投資のために貯蓄できているか」です。

施設の魅力を維持更新するうえでの大事な点ですが、日本の旅館ホテル業は、創業時の巨額の設備投資による負債を返済するために、減価償却費同等額を支払い、いつまでも貯蓄が貯まらない。利益も蓄積せず、金融機関への信用も積み上がっていかない。

このような施設が多く、歴史が生み出す重厚感ではなく、再投資がままならず老いさらばえる結果となっている施設には、事業再生の必要が迫ってきます。

 

鳥倉が関与した本件の施設では、耐震補強の必要性が新聞にて報道されたために、対応が急務になりました。新館は耐震基準を満たしていましたが、本館は適合せず、工事に取り組まざるをえなくなりました。既に金融機関への返済はリスケジュールしており、設備投資に必要な資金が新たに借りられる見込みはなく、もちろん過去の利益が貯蓄としてあるわけでもありませんでした。

 

兄妹の確執はそれに敵味方する関係者を巻き添えに

兄妹の確執はそれに敵味方する関係者を巻き添えに

返済を軽減するリスケジュールをしながらも、まとまった金額の設備投資を行う。金融機関の価値観からすれば、モラルハザードともいえるものです。「ふざけないでください、そんなお金があるのであれば約定通り返済して下さい」というところです。

 

しかしながら、その旅館ホテルが地域経済においてどのような役割を担っているのかを考え合わせ、金融機関側も政策的な判断をすることがあります。過去には財務指標や格付けだけを理由として融資を断ったり、回収に走ったりした、金融機関を縛る金融検査マニュアルは既に廃止されています。今では金融庁が「格付けに関わらず、金融機関は独自の融資判断をしてよい」としています。

 

特に旅館ホテルの場合は、1365日休まずに施設を運営することが原則となっているため、施設の稼働停止に繋がりかねない、水回りのトラブル、空調関係のトラブル、ボイラー、エレベーターなどについては、不可避的に緊急で対応しなくてはなりません。

設備の故障が営業停止に直結します。可及的速やかに修理・交換しなければ、売上を諦めるだけでなく、施設運営を断念しかねない、結果として倒産リスクに直結します。

 

そのため、鳥倉も水回り、空調、ボイラー、エレベーターなどについては、リスケジュール中であっても、ニューマネーの融資を決めた金融機関をたくさん見てきました。

また、ニューマネーが出ないまでも、リスケジュールへの協力により、設備投資資金が貯蓄できるように返済金額や返済期間を配慮する事例は多くあります。

 

本件でも、そのような合意形成をするサポート役として鳥倉に依頼が来たわけです。なぜ鳥倉のような専門家を雇う必要がこの案件にはあったのでしょうか。一般的で単純なリスケジュールであれば大抵の場合、会社と金融機関で合意が可能なのです。

 

実は本件が特異なのは、本館と新館の建設資金が別々の金融機関から融資されている点にありました。そのため、比較的経営が順調な新館に融資していた金融機関側が「本館の経営難を理由に、新館の融資への返済を軽減する」事に難色を示していました。

また、同族経営の同社ですが、本館と新館の責任者としての経営者が兄妹で分かれており、対立関係にありました。そのため、両者で相談して経営改善計画書をまとめるというコミュニケーションが困難な状況にあったのです。

 

整理しますと、耐震補強問題、メイン・サブメインの対立、同族関係の困難さ、と三重苦とも言える状況にありました。

 

金融機関の経営体力により再建計画は変わる!?

金融機関の経営体力により再建計画は変わる!?

意外に思われるかもしれませんが、メインバンクの経営体力によって再建計画の内容が変わることは事実としてあります。正しい再建計画(必要十分な支援策が織り込まれている)と、採用される再建計画(金融機関側の提供可能な支援策)には差があるのです。

 

法的整理(民事再生、会社更生、破産)によらない、私的整理による事業再生は、ステークホルダー(利害関係者)の合意形成によって成立します。逆を言えば、合意形成ができなければ法的整理のような強制力はありません。そのため、ステークホルダーの中でも重要な位置にある債権者としての金融機関の意思決定は重い意味を持ち、金融機関の合意無くしては私的整理による事業再生は成り立たないとも言えます。強制力の無い中で協調体制がいかに作れるかが私的整理のポイントです。

 

再建計画は、金融機関にとっては「不良債権をどのように処理するか」という意味を持ちます。再建計画に協力することにより、金融機関の債務者区分が変わります。「正常先→要注意先→要管理先→破綻懸念先→実質破綻先→破綻先」へと格付けし、それに見合った貸倒引当金を計上します。

 

貸倒引当金は、金融機関にとって「融資した資金と別に、それだけの資金を寝かす」という意味合いを持ち、返済してもらえないだけでなく、格付けに応じてその破綻に備えて資金を積む、という「泣きっ面に蜂」とも言える二重の負担となります。

 

ただし、貸倒れが現実のものとなり、貸倒損失を計上すれば、税務上の損金となり利益と相殺できるだけでなく、貸倒引当金を積むことが無くなります。「二重苦ならば、せめて一重苦を受け止め利益と相殺したい」と考えるのは、金融機関だけでなくお金を貸して返済されなかったことがある経営者ならば考えたことがあるはずです。

金融機関はお金を貸すのが仕事ですから、もちろんそういう案件がたくさんあり、不良債権と向き合い金融機関自身にとって合理的な検討をしています。

 

しかし、金融機関の利益や経営体力が無ければ、当たり前ですが「貸倒損失による損金が欲しい」などとは思えず、何としても返済して欲しいと考えます。結果として、回収可能性が低かったとしても、債権回収ができるという計画を望んだり、不良債権処理が先送りになる事を望みます。正しい再建計画と採用される再建計画が違うのは、このような都合によるものです。

 

事業再生では、このような現実に直面することが多く、「実抜計画(実現可能性が高い抜本的な再生計画)」という言葉が作られ、金融庁も金融機関の都合による「おためごかし」の計画が作られていないかを見ています。

 

本件では、耐震補強が必要な本館のメインバンクは経営体力が弱く「おためごかし」の計画を望み、調子の良い新館のサブバンクは経営体力があるため、当社に資する「実抜計画」を望むという、同床異夢の状態にありました。

 

再建計画の策定により問題発覚

再建計画の策定により問題発覚

本件は、「本館VS新館」・「兄VS妹」・「メインバンクVSサブバンク」・「設備投資VS返済」といった、「あちらを立てればこちらが立たない」という対立軸が入り乱れておりました。事業再生の渦中にある会社とは得てしてそのようなものです。

 

このように対立する軸が多い場合、全ての勢力と逃げずに対話し、印象ではなく「事実」や「数値」に基づいて解決の糸口を探す必要があります。鳥倉自体が旗幟鮮明にして誰か一方の味方となれば、真実を話してもらう機会を失います。

依頼者に忠実であるというクライアントファーストは、「結果」においては最優先となりますが、「過程」においては事実を中立的に解明する姿勢が必要です。

 

本件の金融機関に対しても、同様の姿勢が求められました。最も重要なステークホルダーである金融機関ですが、再生に資するという観点での一致が第一です。経営悪化の際には必要な情報が金融機関に届いていないことが多く、まずは現状把握のための情報提供により信頼を得ていきます。

 

それまでは、兄妹の対立のため、本館・新館をまたがった経営管理がされておらず、決算書だけ繋がった状態でした。結果として、「兄・妹」と「メイン・サブメイン」の双方も横断的な情報を知り得ておらず、統一的な再建計画の立案はできていませんでした。

 

調査の結果、兄の私的流用や職務怠慢などが見つかり、その善後策を改善計画に織り込むと共に、マネジメントの舵取りは妹が主軸となりました。メイン・サブメインも耐震補強の必要性では見解が一致し、必要な資金確保のためのリスケジュールには協力するとの協調支援体制が構築されました。

 

オーダーメイド型リスケジュールと後日談

オーダーメイド型リスケジュールと後日談

通常、リスケジュールにおいては被保全プロラタ方式(債権残高に応じて返済財源を比例配分する方式。単純プロラタとも言われます。)がとられます。その方が、債権者間の保全や担保状況の差、利害関係の差があるなかでも緊急避難的に早期のリスケジュール合意形成が可能だからです。

 

しかし、本件では被保全プロラタではなく、新館・本館から上がる収益による返済財源を分離したうえで、メインバンク・サブバンクへ一定の根拠の下、配分するという案に落着しました。

 

このような変化球とも言える決着は「私的整理はオーダーメイドすることが可能」と言われる由縁ですが、丁寧な対話からひねり出された再建計画となりました。メインバンク・サブバンク共に一定の譲歩を引き出し、耐震補強への投資額を確保しました。さらに、経営状況を反映した合理的な再建計画に基づいたリスケジュールであったこと、返済が長期化する一方で将来的な完済への道筋が示されたことが評価されました。

 

こうして大団円を迎えた本件の再生。計画に基づき進捗をしていくかと思われましたが、前述の金融庁が金融検査マニュアルを廃止、格付けや貸倒引当金の議論については金融機関の裁量によるとしたタイミングがこの案件の前後に起こったのです。

 

それを好機とみたサブバンクは金融庁の見解を踏まえ、サブバンクがメインバンクの債権を肩代わりする形でメイン替えを行い、返済財源を統一し、正常債権として正常化への道を開いたのでした。

 

当時は鳥倉としても格付けによる思い込みが強く少なからず驚きました。新館・本館の財源を分離したことにより、一定程度の返済はリスケジュールに際してもサブバンクに充当され、格付け低下が最低限で済んでいたことも功を奏し原因の一つだと思います。

 

当然、妹の経営努力、インバウンドの風が吹いたなど、本人の努力や幸運に恵まれたという要素もあります。

事業再生に成功する会社というのは、運を味方にすることも多いです。

 

今回の鳥倉再生事務所がお届けした変化

今回の鳥倉再生事務所がお届けした変化 

交錯する利害対立軸に身動きが取れない

→変化→状況が違う中で大同団結する道を開いた

 

早急な耐震補強の必要性に迫られる

→変化→リスケジュール中の設備投資資金の確保を、さらなるリスケジュールにて確保するものの一般的な単純リスケではなく、利害関係の異なる債権者に配慮した案を作成し合意を取り付けた

 

同族経営で兄妹関係が悪化し統一的なマネジメントが行えない

→変化→悪いところは善後策を示して改め、あるべき姿での経営継続の道を開いた

 

リスケジュールによる信用悪化への懸念

→変化→私的整理によるオーダーメイド型リスケジュールにより、当社の信用回復に資する借換の可能性を残した。(結果として、サブバンクによるメインバンク替えに繋がった)

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