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倒産前夜の会社をスポンサーとして救済しようと考えた時

(本記事は、メールマガジンにて配信した内容を編集して公開しています)

 

鳥倉再生事務所は、変化を望む経営者のために事業再生をご提供します。

経営者が会社を変革するために必要な変化を、日々クライアントにお届けしています。

 

そんな変化を求める経営者に、事業再生のきっかけとなるような

エピソードや、最新情報を中心にお届けいたします。

 

今回は『倒産前夜の会社をスポンサーとして救済しようと考えた時』というお話です。

 

スポンサーとして手を挙げる期待と不安

スポンサーとして手を挙げる期待と不安

上場企業のクライアントA社より「倒産前夜であるX社のスポンサーになりたいので、

スポンサーになる際の注意点、段取り、価格目線についてサポートしてほしい」とのご依頼がありました。

 

弊社としては、まずスポンサーとなる際のスキームについて類型をご説明しました。

私的整理による事業譲渡、民事再生法活用スキーム、プレパッケージ型破産スキーム、破産後譲渡スキーム等について、A社にとってのメリット・デメリットを提示しました。

 

A社は上場企業として、リスクのない仕上がりにしたいとのご要望でした。

そのため、「法的安定性が高く、レピュテーションリスクを取らずに済む」

という観点から、X社が民事再生法申請をしたうえで、スポンサー企業となることをA社は望まれました。

 

X社の事業価値は急速に劣化していました。

X社の調査を進めると急落する事業価値を大きく見込んで、監督委員を納得させるプレパッケージ型とするまでの事業譲渡対価を設定するには冒険的な要素が必要になる状況でした。


プレパッケージ型の場合、実質的にはA社はX社のスポンサーに内定する可能性が高いのですが、事業価値と乖離する多額の事業譲渡対価は払わないとA社に判断頂きプレパッケージ型は断念しました。

 

結果として、民事再生申請後、スポンサー公募に際して1つの候補先として名乗りを上げ、入札での落札を目指す方針となったのです。

 

競争入札 いくらと書くのが正解なのか?2つの価格

競争入札 いくらと書くのが正解なのか?2つの価格

結果として、A社も含め合計3社の候補先が手を挙げ、競争入札をしました。

鳥倉はA社に対して、2つの根拠を基に、落札目線を「高め」と「低め」でご提案しました。

 

高めの根拠は『人材採用コスト』見合です。X社の人材を雇用する際にかかる採用コストを概算して示しました。低めの根拠は『事業価値目線』です。急速に劣化するX社の損益見通しを事業計画とした、X社の事業価値を基に示しました。

 

結果としてA社は低めの「X社の事業価値」見合の金額を記入し、入札する方針を定められました。

 

A社は上場会社ですので、取得後、当該事業から上がる売上利益が計画通りとならなかった場合は、支払ったのれん代が減損会計の対象になります。そのため、低めの入札は妥当な判断であったと思います。

 

スポンサー企業として前のめりに取組ながら、事業価値を冷静に検証し、材料を調えたうえで決断されたA社は立派であったと思います。

 

結果は、高めの『人材採用コスト』見合の金額にて入札した別の会社が落札し、A社は正式なスポンサーとなれず、X社の事業を取得できませんでした。

 

ご相談があって民事再生申請まで2ヶ月と少しでした。
民事再生申請後、スポンサー決定までは約1ヶ月であり、かなりのスピード案件でした。

落札できなかったものの、A社より「不慣れな検討を慎重に進めることができた」と謝辞を頂きました。

 

X社はなぜ身売りする憂き目にあったのか

X社はなぜ身売りする憂き目にあったのか

X社との思い出も少し書き残すこととします。

A社から依頼を受けて以後、X社への訪問や社長との面談、経理部長へのヒアリングをしました。

結果として、押し寄せる債権者への対応策などもアドバイスすることとなりました。

そうしなければX社は事前の準備期間も取れず、破綻する危機に直面していたからです。

 

一代で新しい市場ニーズに気づき、ニッチながらも事業を成長させた創業社長のY社長。

自社直営からFC事業もスタートさせ、加盟店による加盟金が入るようになりました。

 

しかし、自社の実力としてのフロー収入(毎月見込める入金)と、単発での加盟金収入(いわば鯨が釣れたときにだけの入金)を区別せずに業容を拡大し、人件費増、地代家賃増、役員報酬増とコスト管理が乱雑になりました。

 

加えて、利益を生まない本社土地建物を購入し債務を拡大。さらに当時の不況の影響もあり不動産価格が下落し、本社土地建物に含み損を抱えることとなりました。

 

FC事業の加盟先へは「売上保証」をうたっていたため、加盟店が増えるたびに仕事を作る必要がありました。結果として、受注により仕事が増えなかった分は、なんと自社案件を加盟店に振り分けることとなり、本来不要な外注コストとしての原価が上がりました。一方で、加盟店は自店で積極的な営業活動をするインセンティブが働かずモラルハザードの要因にもなりました。

 

そのような最中にY社長の生活も乱れ、病に伏し経営危機のタイミングで入院する状況に。

 

致命的となったのは、経営危機を脱するために、再生支援協議会の支援を受けるべく2次対応に進んだことです。X社が窮地に陥っている事実が金融機関の知るところとなり、従来FC加盟店候補企業が開業するために受けていた創業支援融資が受けられなくなったことで、単発の大きな収入であった加盟金が入らなくなりました。

 

フロー収入は原価高(不要な外注)で不採算、単発の加盟金収入も閉ざされ、資金繰りに窮したX社は給料、社会保険の未払いが始まりました。このような経緯で資金繰りは破綻状態にあり、Y社長はA社に救済を求めることとなります。その帰結として、X社は民事再生法を申請します。

 

“身から出たサビ”かもしれませんが、20年の業歴があるX社のY社長はあっという間に追い込まれました。

その時、Y社長は「スポンサー候補となってくださったA社には感謝していますが、一体全体、私やX社はどうなるのでしょうか」と鳥倉に質問されました。

 

意外に思われるかもしれませんが、渦中にある経営者が自分で状況をコントロールする力を失うことはよくある事です。すでに選択肢を自分で選べず、ステークホルダーの意向に身を委ねるしかなくなっていました。

 

鳥倉としては、今後のX社やY社長の行く末、スポンサーの意向次第でY社長の扱いが変わる可能性、民事再生手続きにおいて計画外事業譲渡となった場合、Y社長の居場所はない可能性が高いことを説明しました。そして、Y社長は連帯保証債務により破産する可能性が高いことをご説明しました。Y社長は、「みんなは自分を助けるために動いてくれているわけじゃなかったのか」とびっくりされていました。

 

Y社長に手を差し伸べた方に悪意があるわけではありません。経済的損失を被るために手を差し伸べる方はいません。手を差し伸べることにより問題を改善し、事業再生が達成されなければスポンサーも巻き込まれ損失を出します。スポンサーとなる以上、取得した事業が赤字を垂れ流すことを許容する事はできないのです。そのため取得した事業の再建にY社長がキーパーソンになれるかどうかをスポンサーは冷静に判断するということです。Y社長が利益を出せる人間であれば役職が与えられるし、それが無理な場合は居場所がないというだけです。事業の再生とY社長の生活の維持は、同じ事を意味する場合もありますし、まったく真逆の結果をY社長にもたらすこともあります。

 

乱脈経営の果てに多くの方を巻き込んで破綻しつつあるY社長を、皆さんはどう思われるでしょうか。鳥倉は、物事の善悪も大事ですが、関係する人が少しでも幸せになる結論を模索するのが、事業再生という仕事だと思っています。Y社長に巻き込まれた多くの方に、最終的な落ち着き処をご提供するのも立派な仕事だと思っています。

 

全てを失った後に芽吹く者

全てを失った後に芽吹く者

Y社長には成人した息子さんがおり、X社で職人として働いていました。

Y社長は息子さんを特別扱いしておらず、息子さんは一職人として額に汗していました。

Y社長より「息子に今後どうなるかをアドバイスしてほしい」と言われご面談しました。

 

息子さんに現在の会社を取り巻く状況をご説明すると、淡々と受け止め、意外感はありませんでした。

 

息子さんは「この仕事は意外とニーズがあって、自分を指名してくれている顧客もいる」と、

スポンサーと営業地域のかぶらない所で独立創業したいとの思いを話してくれました。

 

その後何度かお会いし、創業支援融資を受けるための事業計画書の立案をお手伝いし、息子さんから「無事、創業支援融資が受けられた」ことを伺い、鳥倉としてのこの一連の案件がようやく終わりました。

 

今回のメインストーリーは、民事再生法申請し、計画外譲渡により事業を入札にて取得する、「再生型M&A」と言えるお話です。

 

事業再生は、ある種混乱した現場に入っていく仕事であることから、ダメージコントロールに過ぎず、関連する当事者は痛みを分け合う形になることが多いです。このような極端な状況下では、再生策による有利不利は人により異なるのが難しい所です。

 

一番の被害者は貸し倒れた金融機関かもしれませんが、混乱した事態に一定の終止符を打つことは、金融機関のメリットにもなり得ます。

 

スポンサー候補の会社も、危険なリスクのある会社をそのまま引き受ける事態を回避すると共に、同様の案件への対応ができる経験値を積みました。

 

経営が破綻した社長も病気の中で、コントロールを失った事業を納めることができ、気持ちは楽になったと思います。息子の成長と創業という新たな芽吹きを見ることもできました。

 

鳥倉の目指す事業再生の一つの形が見えた、思い出深い案件です。関与された多くの専門家の中、鳥倉は黒衣のような立ち位置で全体の方向性を形作るご支援をしました。

 

M&Aに関心が集まり、破綻企業のスポンサーになってみたいと思う経営者も増えています。また、M&Aの最中で、ご自身の未来が見えない経営者の方へセカンドオピニオンもご提供いたします。聞き慣れない用語も多いかと思いますので、ご面談の際は丁寧にご説明いたします。

 

ぜひ、鳥倉再生事務所へご相談ください。取り残される人間が少しでも減るような事業再生への道をご提案いたします。

 

今回の鳥倉再生事務所がお届けした変化

今回の鳥倉再生事務所がお届けした変化

どのように倒産前夜の会社のスポンサーになったら良いか分からない

→変化→段取りを理解し、リスク許容量の範囲で救済スキームの立案ができるようになった。

 

事業を取得するのに必要な金額が分からない

→変化→合理的な価格形成根拠を理解したうえで、落札価格目線と自社で取得したい金額の折り合いを検討できた。

 

スポンサーが救済策を検討している最中に資金繰り破綻しそう

→変化→厳しい現実と向き合う対応策を提案、X-dayまでの道筋を理解し対処できた。

 

事業再生型M&Aによって関係各位がどのような影響を受けるかわからない

→変化→当事者別の影響とダメージコントロールを理解し、実行できた。

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