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なぜ心理的安全性が事業再生に必要なのか。

日本の中小企業に心理的安全性はない?

日本の中小企業は、社長にオーナーシップ(3分の2超の株主権)と経営執行権(CEO兼COO)という企業統治の上で非常な大権力が集中している事が多いです。

中小企業の社長へ権力が集中

コーポレートガバナンス(企業統治)を発揮する為にはステークホルダー(株主・経営者・従業員・顧客・取引先のほか、金融機関、行政機関、各種団体など、企業のあらゆる利害関係者)が相互に代表取締役社長を正しく牽制する必要があります。代表取締役社長といえど、完全無欠で万能ではいられず、時に加齢や病気などもあり常に一定の能力を多年に渡り発揮し続けるのは無理なのです。

会社は社会の公器と言われますが、社会から必要とされる会社で在り続けるためには、社会との接点が必要です。会社の業績悪化もステークホルダーとの関係性の変化やその変化がもたらす企業経営へのインパクトの重要性に気がつかない事により生じる事がほとんどです。

日本の中小企業の代表取締役社長には、強大な牽制されない大権が握られています。牽制する可能性があるのは、取引先と金融機関、許認可を出している行政機関程度です。結果としてしわ寄せが行くのは従業員に対してです。牽制されない権力者の元で働く従業員の心理的安全性が保たれないのは、言うまでも無く読者の皆様も肌身で権力の怖さを感じた経験があるかもしれません。

事業再生のタイミングでは特に心理的安全性が重要になる

事業再生が必要な会社は、度重なる営業赤字(2年連続以上)や債務超過に陥った会社です。旧来の方針で経営に漫然と取組、結果の出ていない会社です。取締役の改選は会社法では10年以内とされていますが、多くの上場企業では2年で改選とされており、重任する場合には株主総会での決議が必要になります。結果が出ない場合は、株主に交代を求めらます。

中小企業でオーナーシップを持っている社長は、株主総会が形骸化(過半数や3分の2超を1名の株主で保有している事が多く形骸化する)しており紙面上で開催し、見直しや評価をされることなく重任し、登記へ反映している会社がほとんどです。結果として外部からの意見を聞く機会を失い、自ら経営方針を改めるきっかけを無くしています。

残された時間はお金次第。タイミングが大事。

営業赤字に債務超過が重なると資金繰りが悪化し、唯一と言っても良い日本で機能するステークホルダーである金融機関が「もう融資できません」と牽制機能を発揮します。時既に遅しとなりかねないタイミングで登場します。それでも、現在の経営を改める最後のチャンスとなります。

しかし金融機関の外部よりの牽制だけでは会社は良くなりません。現在の誤った方針を改め、収益が上がるビジネスモデルを再構築する為には現場を熟知し、取引先との接点を持つ従業員の力を活かす必要があります。従業員が会社に染みついた社長の悪癖を改める、心理的安全性のある職場なのか否かが、会社の最期のタイミングで改めて問われます。

事業再生にはどんな心理的安全性が必要とされるのか。

心理的安全性とは、人々が自分自身を自由に表現し、リスクや恐れがない状態で働いたり、学んだり、コミュニケーションを取ったりすることができる状態です。事業再生では、現状を変える必要があります。まさにリスクや恐れが無い状況で果敢に挑む必要があり、心理的安全性が必要な状況です。

営業赤字に債務超過という困難な状態で取り組む変革が100発100中な訳がありません。そのため、失敗や欠点を認めることが必要になります。その失敗を通じて新しいアイデアや提案を引き出し、組織を成長させるきっかけにします。

会社というチームで困難を乗り越えることが大事

事業再生という現状を変えることだけが決まっている困難な状況の中で、心理的安全性が発揮されればチームや組織全体のクリエイティブな能力が向上し、生産性も高まることがあります。しかし、強大な大権を持つ社長が現状否定を認めず、変化を拒み、心理的安全性がない会社のままでは、従業員は自分自身を抑圧し目立つことを避け、積極的に社長にものを申すというリスクのあるコミュニケーションを避け、新しいアイデアを出すことを躊躇します。その結果、個人や組織全体の成長が制限され、改善が必要な事業再生の最中に生産性が低下します。有意な人材から退職する会社ができあがります。

心理的安全性を高めるためには、リスクや失敗を受け入れる文化を作ることが重要です。意見を尊重し、オープンなコミュニケーションを促進し、事業再生に意欲的に取り組む個人の強みや貢献を評価することも重要です。

社長は自らの行動や言動を通じて、心理的安全性を促進することが求められます。心理的安全性に配慮ができない社長の下では、従業員が表現を抑制し、リスクを取ることを避け、創造性を制限しています。これは組織全体の成長や成果に悪影響を及ぼします。社長自らが心理的安全性を促進する方法を学び、実践することが重要です。

鳥倉が認定事業再生士として心理的安全性にこだわる理由

鳥倉が事業再生に携わり17年もの月日が経ちました。しかしながら日本の中小企業に心理的安全性が定着したとは思えません。特に事業再生が必要な会社において、心理的安全性ないという傾向が顕著です。これは日本の代表取締役社長に与えられた大権が根本原因と感じています。

心理的安全性は事業再生に必要

鳥倉は現場の改善により業績を立て直すことを重視しますが、そのアイデアは従業員から鳥倉にもたらされるものです。

鳥倉 「なんでこんな凄いアイデアが実施されていないんですか?」
従業員「社長に自分が進言してクビになるのが嫌なんです

鳥倉 「なんでこんな、みんなが無駄だと思うことがまかり通っているんですか?」
従業員「社長が10年前にこうしろと言ったからです」

といったコミュニケーションは枚挙に暇がありません。

鳥倉 「どうしてこんなに良いことを教えてくれるのですか?」
従業員「鳥倉さんなら秘密を守って、社長の首に鈴をつけてくれそうだからです」

従業員は心理的安全性の無い状況でも、鳥倉の様な社長を牽制し会社を良い方法に改革してくれる力を求め、探しています。本来であれば会社にコーポレートガバナンスが機能し、社長の大権が牽制され、日頃より心理的安全性を作り出す組織的な努力があれば、困難な課題に直面しても自己解決していけるはずです。

簡単なようで難しい仕事です。鳥倉自身も現場で社長の大権によりクビになったり、解任になった事がたくさんあります。この仕事の困難さを肌身にしみて理解しております。会社のみなさんで実行が難しい場合は、鳥倉がお手伝いをさせて頂きます。

心理的安全性のない中で改革に挑むと言い出しっぺがクビになる事も。

心理的安全性は事業再生の為にも有効ですし、会社が家業から企業へ脱皮する成長の機会を生み出すためにも役に立ちます。

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