事業再生を学ばれる方向けです。事業再生を経営者として実践される方には、参考になるかもし
れません。知識がなければ、事業再生ができないという訳ではありませんが、知識があれば事業
再生という不案内な道の足下を照らしてくれます。
私は経済学部卒なので事業再生に取り組む上で、最初は法律が壁に感じました。事業再生のアド
バイスをする人間は、①民法→②会社法→③破産法→④民事再生法がとりあえず大切だと私は感
じています。
法律はクライアントを導く上での基礎知識となります。勉強をして法務担当者や弁護士に質問す
る回数を減らさないと、案件が円滑に進む事はありません。
法律を知っておけば、最悪の場合に会社がどうなるのかが、わかるようになります。事業再生で
は、常に最悪を想定するのが大切です。私的整理の調整が上手くいかなかった場合、どういった
法的整理の流れになるのか常にイメージすることが、顧客にとっての“想定外”を作らないアドバ
イスの基礎になります。
①民法は基本です。②会社法、③破産法、④民事再生法はいわば応用編です。それらに定めが無
い場合は民法に立ち戻って判断されます。
①民法は範囲が広いですが、事業再生においては連帯保証や担保、債権保全を理解する上で大事
です。忙しい場合は債権総論だけでも理解しておくと、幅が広がります。実務として、保証や担
保に関係するところの理解は事業再生を実行する上での大前提となる為、欠かせません。
コーポレートガバナンスが崩壊していることも多いのが事業再生です。会社や社長は②会社法を
理解していないことが多く、会社を改革する上で、必要な手続や手法を会社法に基づき提案する
必要が常にあります。
事業再生では、ファンドが登場人物になることも多いため、会社法を手続論と軽視することはで
きません。②会社法は必須です。
①民法より先に②会社法を学んだ方が実践に役立つ面もありますが、事業再生の実践知識として
の会社法の前に、事前知識としての民法が必要と考えこの順序に致しました。
さらに③破産法と④民事再生法は詳しくなるととても役立ちます。事業再生では、事業再生に取
り組む事で失うものを減らすため、急を要するもの以外は、私的整理で挑戦するのが一般的です。
万が一、私的整理での調整に失敗し、法的整理に移行するシナリオを常に意識する必要がありま
す。その為の準備として、③破産法や④民事再生法への理解が必要です。
私的整理に失敗してから、法的整理を学ぶのでは遅いのです。私的整理に失敗すると法的整理に
移行するのは必定であり、私的整理に協力できないという債権者にも法的整理を意識して頂くこ
とで、私的整理への協力が得られることもあります。その為には、私的整理も法的整理も理解し
ておくことが肝要です。
法的整理を事前に理解しておかないと、債権者平等を意識しない偏波弁済や、社長自身による横
領や資産散逸などを原因として、法的整理に移行した場合に、クライアントである社長を犯罪者
にする可能性もあります。
事業再生に取り組む段階で事前に説明をし、理解をして頂いてさえいれば、社長も進んで法律違
反をしようとは思わないのです。無知が結果として、犯罪を生むと言っても過言ではありません。
また、④民事再生法は行き当たりばったりで選択すると大変苦労します。④民事再生法こそ準備
が大事な法的手続きです。申立から再生計画の認可までが、6ヶ月以内という短期間であること、
債権額の過半数、債権者数の過半数の同意がいるためなんとなく申し立てても成立するものでは
ありません。加えて、申立直後からの信用不安は多大な影響があり、資金繰りの目処が立ってい
るか、スポンサー候補がいるなど、見通しが具体的で無くては危険です。
破産をしたくないとおっしゃる社長に「では、とりあえず民事再生で検討の時間を稼ぎますか?」
とおっしゃる弁護士さんがいたら、安易な民事再生の検討に反論ができるくらいに、民事再生法
に詳しくなって下さい。その上で、民事再生法しか会社を救う方法が無いとなれば、選択肢に入
れてください。
会社更生法も知識としてあってよいですが、対象とする企業規模が大きく使用頻度が少なく、基
本的な枠組みは民事再生法とほぼ類似なので、異なる点(担保権行使に制限)を理解すれば、と
りあえず勉強は後回しても実務上、影響は軽微です。
法学部出身者や法律系の資格を取得した方以外は、少し大変に感じるかもしれません。社会人に
なってからの勉強は即、実務に使える、実務で直面して勉強するのでドンドン身につく点です。
困難に思える勉強も、顧客の笑顔のためなら頑張れるのが社会人です。自分自身のアドバイスに
不安を感じない為にも勉強は大切です。ぜひ事業再生を軸に、法律を学んでみてください。