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事業再生版 ミイラ取りはなぜ?ミイラになるのか。

ミイラ取りがミイラになる

 ミイラを取りに行った人が、目的を果たせずに、うっかりすると自分までもミイラになっ

 てしまうというところから) 人を連れもどすために出掛けた者が、自分も先方にとどまっ

 て役目を果たさない。また、意見しようとした者がかえって先方と同じ考えになってしまう。

 精選版 日本国語大辞典 小学館

 

人間誰しもが陥りがちな罠なのですが、ここでは事業再生の現場でミイラになってしまわない

ように注意点を書きます。

 

このnoteは、会社の改善改革をしたいと考えている方、社長にアドバイスをされる方、事業再

生の仕事をされている方へ、役に立つ記事にしたいと思います。

社内改革の旗手や社長のアドバイザー、事業再生の専門家は百戦錬磨の猛者です。その猛者の

ミイラ取りがミイラになるのはなぜでしょうか。

結論 

1 専門家も費用をもらう立場。予算や決定権を持っている人に迎合する
2 社内の協力を引き出し情報を取得しようと取り込まれる。
3 社長の意思決定を支援し会社を変化させようとして、社長と妥協する

この3つのポイントに沿って解説致します。

 

1.専門家も費用をもらう立場。予算や決定権を持って

いる人に迎合する。

名著があります。『企業不正の調査報告書』日経BP安岡孝司著

全編を通して大変参考になりますが、冒頭からいきなり著者の経験から絞り出した強烈なワードで

ある“調査発注者免責の法則”が説明されます。

 

 不祥事の調査は企業側の意思と費用負担で行われるので、当局や検察の調査・捜査とはまっ

 たく違います。経営者は会社のお金を使って自分の首を絞めるような調査を頼みません。調

 査発注者の責任が調査されないことを「調査発注者免責の法則」と呼ぶことにします。

 

調査発注者の責任は調査されない。

 

厳しい再発防止策が提言されないケースもあります。

 

 旧経営陣の責任がしっかり調査されます。このケースでは新経営陣にも過去の役員がいる

 はずですが、彼らの責任は調査されません。

 

調査発注者の不利なところまで調査したものが優れた報告書といえます。

 

専門家は公正中立であることが求められます。専門家が必要なシーンとは、利害対立が起こってし

まっている現場である事が多く、専門家の意見まで偏っていると対立を緩和するための役に立たな

くなってしまうためです。

 

一方でお金を貰う人に対して顧客忠実義務があります。公正中立であることにより、顧客に対して

最大のパフォーマンスを発揮できるのだと言うことを社長によく理解していただく必要があります。

 

お金をいただく方との正しい、改善につながる関係性構築に失敗すれば、迎合してミイラになります。

 

2.社内の協力を引き出し、情報を取得しようと取り込まれる。

事業再生では、まずは現状把握から始まり、経営改善計画書の作成を行います。その為には、基礎

となる情報の収集が必要です。情報の出し手に協力を求めなくてはなりません。

 

事業再生とは“何かを変える”仕事です。現状維持のままでは破綻する可能性のある会社に入って仕事

をします。社内の人間にとって現状を変更すると言うことは、今まで通りに行かないことを意味しま

す。

 

下手な情報を出して、自分の部署が改善改革のターゲットとなれば平穏無事には済みません。あれこ

れ指摘を受け、追加資料要求や現状報告を求められると日々の仕事と別に業務負荷が発生します。

 

社内に協力者を作らなければ、事業再生の仕事はできないのです。その為、社内の人間と関係性を作

る必要が生じ、協力を引き出すためできれば仲良くなりたいとなるのは人間ですから仕方ありません。

 

データを源流から取得する力が事業再生には求められます。存在する資料をもらおうとするから、

り込まれてミイラになります。もちろん、協力してもらえれば楽なのは間違いありませんが、データ

を人質に駆け引きされるくらいなら、伝票やパソコンの中のデータから、自分で資料を作り出す、

悟と気概が必要です。

 

3.社長の意思決定を支援し会社を変化させようとして、

社長と妥協する。

事業再生では専門家として「やりたいこと」「できること」と依頼者である社長の「期待されること」が最

初から一致することはあまりない。

 

その為、丁寧に必要性を説明し、どのように社長の期待している事との整合性を図って変化を実現

ていくかを話し合う必要があります。

 

事業再生の利害当事者は社長であり、コンサルタントではありません。しかし、事業再生を成し遂げ

る事が、共通の目標となれば利害は一致し、共に歩めるはずです。

 

全ての返答にYESをもらう必要はありません。和して同ぜず、が大事です。調和は必要ですが、仲良

し倶楽部になる必要はありません。同床異夢であったとしても、方向性を合わせ、矛盾を孕みながら

現実を動かしていくことが大事です。

 

初期の目標設定と課題認識の擦り合わせができていれば無惨なことにはなりません。しかし、社長の

協力が引き出せないからといって、妥協を繰り返せば、妥協してミイラになります、結果として事業

再生に成功する事はできません。

 

4.おわりに

”迎合してミイラ”

”取り込まれてミイラ”

”妥協してミイラ”

はいかがでしたでしょうか?

 

ミイラ取りがミイラになる。ということわざが生まれるほどに、この現象は一般的なのです。その方

が、優秀か、そうでないかは関係ありません。罠が見えていても、はまり込んでしまう危険がある

造的な問題です。

 

事業再生では特に、上記で指摘した3つの構造がミイラを生み出しやすい形になっています。

 

事業再生は、人の証を大切にし、悪しき道を糺し、事業や人を守り育てる尊い仕事です。私はこの仕

事に志をもって取り組んでいます。そんな私でもミイラになりそうになります。自戒を込めてお伝え

致しました。ぜひ皆さんもお気を付け下さい。

 

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