共感マップを作ったことはありますか?共感マップは、ターゲットの置かれている状況や
感情を理解するための分析方法です。
ここでは『事業再生が必要な社長』と対象のペルソナを設定し、ペルソナの考えているこ
とや、ペルソナの行動が分かるよう分析します。ペルソナのことを本気で考え、理解する
ことが大切であり、そのために欠かせないのが共感マップです。
鳥倉は事業再生を仕事として17年が経過しました。70社を超える会社の再生に携わり、事業
再生が必要なたくさんの社長と仕事をしてきました。それらの経験を濃縮して一つのペルソナ
を生み出しています。
共感マップでは以下の6つの要素に分けて分析します。
1.見ていること
2.聞いていること
3.考えていること・感じていること
4.言っていること・やっていること
5.痛みを与えるもの
6.欲しているもの
を以下にそれぞれ見て参りましょう。
Table of Contents
1.顧客は何を見ているのか。環境、友人、市場が
提案するもの。
事業が順調であれば事業再生は必要ではありません。その為、事業再生を依頼する社長は、資金の
ない現実を見ています。そして、お金のない現状をどう改善すれば良いかを模索しています。
新規製品開発や新規開拓も進まない。結果として売上減少・粗利低下から事業継続への不安を感じ
ています。
銀行支援による新規借入は謝絶され、金融機関の担当者と会って相談しても公的支援や助成金獲得
を勧められるだけで融資はしてもらえません。
その為、手形割引・市中割引など金融機関以外の資金調達手法の検討を始めます。
事業継続への不安を感じ、取引先による支援が得られないか、オーナーシップを失ったとしても増資
可能性がないか、少人数私募債に応じてくれる先はないかと調達方法を広げていきます。最期の手段
としてリスケジュールが検討され始めます。
2.顧客は何を聞いているのか。友人、上司、
インフルエンサーが言っていること。
社長の周りにも事業再生に詳しい人間はいません。事業再生という言葉を知らない場合も多く、
破産という言葉だけが耳に入り、頭を駆け巡ります。多くの周辺の人間もまた正確な情報が無い。
そのため、ドラマで見たような話ばかりです。
一家離散、夜逃げ、家財差押というイメージばかりが先行します。経験や知識の無い相手に相談
するため、心配されますが嘘・ホント・経験談・噂が混じり、何を参考にすれば良いかわかりま
せん。
中には裏技があるとの話をする人もいますが事件屋・整理屋の類の話で合法ではありません。事業
に失敗するのは犯罪ではありませんが、非合法な人の非合法なアドバイスを実行すれば犯罪者にな
ります。
事業再生はマイナー領域であり、相談される側もお金がない相談をされても困ります。その為、「迷
惑掛けないようにしろ」・「諦めた方が良い」・「金を借りて乗り切れ」と他人事のような事を言われま
す。
お金のない漠然とした不安は、具体的な差押の恐怖に変化し、給料が払えなくなれば労働問題に飛び
火します。解決のできない悩みを抱えて、社長は保険金の確認を始めます。「死んだらなんとかなるの
かな?」と自分を追い込みます。
3.顧客は何を考え感じているのか。大きな関心事、
心配、願望。
事業の失敗が人生の失敗であると捉える社長は多いです。その為、事業再生の必要がでると周りとの関
係性が維持できるかを考えます。
せまいこの町で生きていけるか?と生活の心配が出てきます。社長は、社長以外の仕事をした経験が乏
しく、社長業が続けられるかが関心の中心となります。社長業を継続して給料がもらい続けられるか心
配になります。
わがままな訳ではありません。日本的融資慣行と言われる連帯保証問題があるためです。社長は事業に
失敗すれば多くの場合、自宅保全はできず家を失います。自宅を失えば、引越の必要が出て費用がかさ
むだけでなく、子供の学区が変更になる事もあり、子供の進学への影響も心配されます。
再生可能性はあるのだろうか?自分で自分が信じられない状況が続きます。自分自身も心配なのに、ま
してや従業員を守れるか?、支払手形を振り出している会社の場合は、不渡懸念もあり、取引先の連鎖
倒産も頭をよぎります。
自分の信用はブラックになる?のだろうか、破産したくないと心から願います。親身な金融機関がいた
としても、債権回収のためではないかと疑心暗鬼となり、銀行を信じて良いのか?わからなくなります。
4.顧客はどんなことを言い、どんな行動をしているのか?
公の場での態度、様子、他人への振る舞い。
社長になれるという人間はめずらしい存在です。その為、「一歩、家を出れば」・「一歩、会社を出れば」、
公人として立派な言行を心掛けている方も多いです。
事業再生が必要になっても「こんなはずじゃなかった」「年金にはまだ早い」「まだまだやれる」「従業員を
守りたい」「リベンジ」「再チャレンジしたい」「借金は完済したい」と強気の言動を意識しています。
少し弱気になると「借金があるからやめられない」「家族に借金は残したくない」と本音が垣間見られます。
本音を自由に話せない孤独を社長は一身に引き受けます。「銀行が何を考えているかわからない」「従業
員は社長をわかってくれない」味方がいない孤独を味わいます。
日本の社長の平均年齢は東京商工リサーチの2021年8月発表の調査によれば62.49歳です。若いときは、
困難を前に闘志を燃やしていましたが無理も聞かなくなり、平均寿命を考えると自分の人生で目の前の
問題が解決できるか不安になるのは無理もありません。「息子に会社を継ぎたい」と事業承継を意識しま
すが、事業再生を目の前にすると「借金があるから継いでくれない」と現実が阻みます。事業再生に成功
しなければ、事業承継できない会社は多いです。
5.痛みを与えるもの。おそれ、フラストレーション、障害物。
事業再生を依頼するぞ!と意思決定した社長の前にも、障壁はあります。事業再生に取り組む決断が遅
れ、すでに自転車操業となっており、資金繰り不安を抱えています。事業再生に掛かる費用は捻出でき
るだろうか?社長のフラストレーションとなり、痛みを与えるものは尽きません。
すでに赤字を複数年繰り返し、債務超過となり、過去に借りたお金は返済ができるか不安なほどに、過
大な借入金となっています。
もがけばもがくほどに状況が悪化する事も多いです。自宅担保は既に複数抵当権や根抵当権が付けられ
調達余地はなく、ヤミ金からお金を借りてやり過ごし、高利借入に苦しむケースもあります。
資金が無くなると租税滞納、社保滞納が始まります。社長はもともと強い人なので、自分を襲う艱難辛
苦には耐えられますが、過去の経緯から連帯保証人となっている第三者保証人を巻き込む可能性が出て
くると人質を取られたも同じで平静ではいられません。
給料遅配が始まり、仕入先への支払いも滞り、今まで仲間のような関係だった既存関係先との関係変化
が起こります。ついには、大事に採用し、育ててきた従業員のリストラを決断する事となりますが耐え
がたい苦痛です。
6.得られるもの。ウォンツとニーズ、成功の基準、障害物。
このようなあらゆる状況や感情を乗り越えて事業再生を成功させます。事業再生に成功すれば、安心・
安全が確保されます。具体的には、安定資金確保し資金繰りの悩みが頭から無くなり、社長が苦しみか
ら解放され、従業員・家族の維持が図られ、生活基盤の安定します。
金融機関との関係再構築ができます。危機を脱して、社長の手腕が再評価されます。社会的地位の確保
ができることを意味します。危機を脱して事業に再チャレンジする時間が生まれるのです。
中には、再生についてこれず離脱する社員も出ますが、大きな変化を成し遂げると新しい組織に実質的
に生まれ変わっており、やむを得ないことです。
7.終わりに
事業再生に挑む社長のペルソナを少しは理解できたでしょうか?軽傷、重傷の度合いによって多少は状
況が変化しますが、大袈裟にご説明しているとは思いません。
社長は多くの状況を抱えています。動きの遅い社長、判断できない社長がいらっしゃるのは事実ですが、
このような状況にいては、動けないのも判断できないのも無理はありません。
社長のために支援をする人には、ここを理解して頂きたくてこの『事業再生が必要な社長の『共感マッ
プ』』を書き上げました。
社長で読んで下さった方がいらっしゃったらとても嬉しいです。あなたの状況や思考はこのペルソナ分析
と、どの程度一致していますでしょうか。
鳥倉が難問解決コンサルタントを名乗っているのは、これらの諸課題を解決した実績があるからです。あ
なたの固有の状況も解決致します。ぜひ一度ご相談下さい。