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【インタビュー】企業再建の苦渋の措置「リストラ」の注意点について

本記事では、事業再生において「リストラ」を検討している経営者の方々へ、鳥倉再生事務所からお伝えしたいことやアドバイスなどを、代表へのインタビューという形でお伝えいたします。

 

なぜ、「リストラ」に注目すべきなのか

なぜ、「リストラ」に注目すべきなのか 

 

 

――「リストラ」というテーマについて、なぜいま注目すべきなのでしょうか?

 

 

一番の理由としては、コロナ禍で業績が悪くなっている企業が多いという点ですね。

まずはそもそもどうやって業績を立て直すかという話なのですが、普通は売り上げや利益を上げて立て直すことに各企業は注力するかと思います。ただコロナの最中ですと、素直にモノやサービスを買ってもらえるような状況でもありませんし、営業に行くにしてもなかなか対面ではお話ができない状況ですよね。また仮に買ってもらえたとしても、相手の与信状況も分からないものですから、大きな商売の場合は特に「代金が回収できない」といった事態になるとダメージが大きいです。そういったこともあり、売り上げや利益を拡大して会社を再建することが難しい時代と認識すべきなんですよ。

そうしますと、次は「社内のコストを改善しよう」という話になります。そこで、いま現在大手の企業を中心に行われているのが、「オフィスを返上する」という動きなんですね。リモートワークや在宅勤務によって、社員が集まったり、顔を合わせて会議をするような場所を確保しておく必要がないという理由から、オフィスを解約する企業が増えているわけなんです。

 

そして、順番としてその次に手がつけられるのが「人員」だと思うんですよね。今、政府が「雇用調整助成金」というものを出しており、会社に所属していながら仕事がない従業員、出勤する必要のない従業員に対しては、政府が保障を出しているわけです。

その雇用調整助成金の期限が、4月までだったものが6月まで延長されることになりました。6月までは、企業にしがみついている社員の雇用が守られる可能性があるということです。

とはいえ一方で、この雇用調整助成金では大赤字の企業は経営を守ることはできません。企業全体のコストにおける人件費のコスト負担というのは、もちろん企業によりますが、だいたい23割くらいなんです。ですから、助成金をそのまま人件費に充てたとしても、残り7割の諸経費の削減が図れなければ会社が潰れてしまうリスクが残るわけです。すると結局、「それでも会社が潰れてしまうなら、人員も整理しなくてはいけない」という話になってしまいます。

 

例えば失業率を見ただけでは、正規雇用の分しか反映されないために、実態よりも状況が良く見えてしまいます。ただ実際の企業人事の現場では、アルバイトや契約社員といった雇用期間の定めがある人員を、契約満了と時点で雇い止めしています。そしてその次には、正社員の人件費をどうやって削るかという段階に至るのです。今後、正社員の雇用を解いていく企業は否応なしに増えていくのではないかと予測しています。

 

 

――今までかろうじて正規の社員を守ることができていた企業が、今後は正社員の雇用まで調整せざるを得ない状況が発生しうるのですね。それは企業としても苦渋の選択ですね。

 

 

コロナ禍になる前は人手不足の傾向が強かったため、多額の採用費をかけて人員を集めていた会社も多かったです。その集めた人員をすぐに解雇するのはどうなのかという見方もあるのですが、資金繰りの危機の前では、やりたくないことにも手をつけなくてはならないんですね。

 

 

――実際にそういったご相談は増えているのでしょうか?

 

 

今のところはまだありませんが、今後増えてくるだろうという予測はありますね。

 

 

日本市場に「リストラに手馴れている」経営者はいない

日本市場に「リストラに手馴れている」経営者はいない

 

 

――今回は「リストラの注意点」がテーマですが、やはり専門知識が豊富な経営者の方にとっても「リストラ」は難しいものでしょうか?

 

 

人員整理というのは組織にとって非常に強いストレスのかかる業務ですから、慣れていない人がやるのは辛いですし、遺恨も残る可能性があります。そのため、ある程度は外部の人に任せた方がスムーズにいくんですね。リストラに手馴れている人というのは日本の労働市場にはほとんどいませんので、そういう意味ではリストラに手馴れている私にご依頼いただくということが一つの選択肢になるのではないかと思います。

これは前提としての話ですが、日本の法体系の中では人員整理というのは認められていないんですね。いわゆる「解雇」ができないということです。

では、解雇ができない中でどうやってリストラを進めるのか。法律で制約がある整理解雇というと、みなさん経験がないことがほとんどですので、どのようにして進めればよいかわからないというのが実情なんですね。

とはいえ日本の雇用制度というのは、労働者を強く守る仕組みになっているものですから、手続きに瑕疵があると、会社は思わぬ損害を被りかねません。例えば会社が損害賠償請求を受け、さらにその上でその従業員の復職を認めざるを得ないといった事態もありうるわけなんです。資金繰りが厳しいという理由で着手した人員整理で、法務リスクを犯してしまい、逆にお金が流出してしまう結果にもなりかねないということです。

 

 

――そのあたりは、何か対策はあるのでしょうか?

 

 

いわゆる整理解雇の4要件というものがあります。人員削減の必要性が本当にあるのかという「人員整理の必要性」、その解雇を避けるための努力はしたのかという「解雇回避努力義務の履行」、解雇の人選に正統な理由があるのかという「被解雇者選定の合理性」、そして解雇手続きに妥当性があるのかという「解雇手続の妥当性」ですね。この4つの要件を担保した上で進めていかなくてはいけません。

 

まずは「解雇回避努力義務の履行」、つまり「解雇する前に経費削減などの努力はしたのか」、というところから始まります。経費削減の中には、例えば経営陣の報酬削減や、場合によっては役員数の削減なども含まれます。上層から手をつけているのか、末端の社員にしわ寄せしているだけではないのかという話になってしまうので、すぐに社員を解雇することは到底できないわけですね。

ただそういった経営陣の報酬削減や社員の解雇ではなく、「移動や配置転換ではダメなのか」という話になる場合もあります。その部署だけ人員が余剰になっているだけで、他の部門で人が足りないのであれば移動すればよいという考え方ですね。

 

また「被解雇者選定の合理性」も難しい要件ですね。なんとなく「あの社員は営業成績が悪いから」とか、「あの社員は仕事の質が悪い」といった理由では、合理的な人員選択の理由とされない可能性があります。一定の評価基準が整っている企業であればまだしも、人事評価制度の整っていない中小企業場合には、人員の選択の妥当性に対して疑いがかけられる可能性も十分にあるわけです。

 

 

――そういった要件を満たすのはなかなか難しいですね。

 

 

そうなんです。就業規則にもよりますが、たとえ評価の低い社員であっても、戒告や訓告、場合によっては減俸といった措置によって、「解雇する前に必要な処分をしておくべきだったのではないか」と言われることもあるんですね。

そのため、懲罰的な意味合いを持って解雇をすることは非常に危険なわけです。

 

 

――解雇にあたっては、会社としても事前の努力が必要なのですね。

 

 

解雇に至るまでの手順の重要性

解雇に至るまでの手順の重要性 

 

 

――リストラは、経営者の一存では決してできないものなのですね。

 

 

そうですね。ここまでのお話で、かなり雇用者が守られている社会であることはお分かりいただけるのではないかと思います。

そして最終的に、「解雇手続の妥当性」もネックになってきます。解雇にあたっては、社員によく説明をしなければいけないということですね。社員とよく話し合った結果、解雇される社員本人も納得しているのかという話です。それにあたっては、例えば会社の売上や利益といった計数を示して説明しなくては納得を得られないでしょうし、場合によっては資金繰りが苦しい事実を伝えなくてはいけません。

そういったこともあり、整理解雇をする前には希望退職を行うなどの措置が取られることが一般的です。希望退職というのは、自主的に手を挙げた人に対して退職を促す制度ですね。この希望退職と整理解雇は全く意味合いが違うものですから、希望退職は「整理解雇を回避するための努力」の一つに位置付けされます。「整理解雇を行う前に希望退職を募って対処したが、なお資金繰りが厳しいので整理解雇を行います」という大義名分が一応できるわけですね。

 

 

――踏むべき手続きにも順番があるのですね。

 

 

ただし希望退職という制度も、決してリスクがないわけではありません。希望退職を募るにあたってはインセンティブを設計するケースが多いです。

例えば割増退職金ですね。これは普通、解雇予告手当といいまして、1ヶ月前予告として1ヶ月分の給料を支払った上で、さらに退職金を支払うというケースです。退職金は就業規則に定めのない企業の場合は払う必要はありませんが、その場合も1ヶ月前予告ではなく何ヶ月分かの手当を支払ったり、1ヶ月間は出社せずに転職活動をすることを許可したりといったインセンティブを設計する必要があります。

 

 

――そういったことも鳥倉再生事務所にご相談すれば、フォローしながら一緒に進めていただけるのでしょうか?

 

 

もちろん、お任せいただければと思います。

というのも、退職のインセンティブを設計するにしても、資金繰りを管理しながら行う必要があります。資金繰りに余裕があればインセンティブの設計もある程度は自由にできますが、もう資金繰りが厳しくなっている状況の企業で、適切なインセンティブを設計するのは非常に難しく、実現性が低いんですね。もしご相談をいただければ、財務的な余力を考えながら適切な制度を設計していくことが可能です。

 

また、これもよくある話なのですが、希望退職で退職する人というのは、すぐに次の仕事が見出せるような優秀な社員であるケースが多いんですね。「転職するいいきっかけだから、退職金を多めにもらって次に行こう」という考えで、会社の中核となる人材が流出してしまう可能性もあるんです。

そのため希望退職にあたっては、どういった人を対象に募るかということも非常に重要です。例えば年齢であったり、役職であったりと、階層を区切って希望退職を募集するなどですね。そうでなければ、会社が再建するための人的なパワーがなくなってしまうこともあるんです。

 

 

――優秀な人材まで失ってしまうのは、とても残念なことですね。

 

 

リストラは企業存続の最終手段

リストラは企業存続の最終手段 

 

 

――リストラに関係する制度をすべて経営者の方だけで設計していくのは、どうしても難しそうですね。

 

 

そうですね。まあ非常にネガティブな業務ですし、経営者のみなさんも当然、思い入れを持って社員を集めてきたわけですから、そんな社員を解雇していくのは非常にストレスになります。どうしても、手が緩んでしまうということもあるでしょう。

 

今回お話ししてきたように、整理解雇というのはかなり実現のハードルが高いんですよね。整理解雇をするには相当な理由が必要ですので、会社の破綻の懸念があるというレベルでなければできないわけです。いわゆる緊急回避みたいな話で、「このまま全員この船に乗っているとみんなの重さで沈んでしまう状況が予見されるから、一人ずつ船を降りていってもらう」という作業なんですよね。

 

 

――企業の存続のための最終手段ということですね。

 

 

その時に、一定の合理性と正しい手順をもってブレずに進めていけるかが大事です。人によっては気の優しい経営者の方もいるものですから、「会社が潰れればいい」とか、「自分だけがすべてを失えばいい」とか、自分に原因を求めて、自分で諦めてしまうような思考に陥る場合もあります。

ただ実際は、社長だけが責任を背負いこめば解決するかというと、そうではありません。問題の原因というのは、コストを負担できる売り上げが現状ないということ。つまりは資金繰りの構造自体が悪いものですから、そもそも維持することが不可能な場合が多いのです。問題を放置し続けたとしても、その先に未来はないので、どこかで急に破綻するということが起きてしまいます。

そうなってしまっては守れた従業員も守れなくなりますし、それだけではなく取引先や金融機関、株主など、関係各所にさらに迷惑をかけるような結果にもなりかねません。辛い決断と実行をせずに先送りすることは、問題を大きくすることに繋がりかねないのです。

 

 

――早めに対処、早めに相談をすることが大切なんですね。

 

 

そうですね。実情としては、人員整理や整理解雇を選択肢に入れずになんとかしようとされる経営者の方も多いです。ただこのご時世では、リストラもやむを得ないと思うんですよね。政府の雇用調整助成金が続いているうちは、場合によってはなんとかなるかもしれませんが、それも続かない可能性がありますので。

というのも、日本全体が不景気の時は政府も支援をしてくれますが、だんだんと立ち上がってくる企業や業界が増えてくると、その支援も続かなくなってきます。今は、業種によっては少しずつ回復している様子も見受けられますよね。上場企業の3分の1ほどは売上利益の上方修正があるなど、コロナ危機に直面しておよそ1年が経った今、立ち上がってくる企業と立ち遅れている企業がはっきりと分かれてきています。いよいよ、会社の自浄努力が求められてしまう状況だと言えるでしょう。

 

 

――ありがとうございます。リストラについてだいぶイメージが湧いてきました。

 

 

終わりに

リストラの注意点

 

 

――そのほかに、経営者のみなさんに伝えておくべき注意点はありますか?

 

 

あともう一つ、こういったリストラのお話をしますと、手慣れている社長さんの中には「うちは大丈夫です」とおっしゃる方もいるのですが、蓋を開けてみると手順をひとつも守っていない場合もあるんです。

詳しくうかがってみると、「うちは社員に退職届を持ってこさせるんで、解雇じゃないんです」といったお返事が帰ってくるんですね。「社員の自主的な退職ですよ」という主張ですが、これは社員の方を欺いていることになってしまい、非常に脱法性が高く、グレーゾーンな対応と判断せざるを得ません。訴えられたら負ける可能性が高い上に、社長の説明に虚偽があった場合は重大な法律違反になりますので、非常にリスクが高いです。

 

他にも注意すべきなのが、「自己都合退職」と「会社都合退職」の違いです。

自己都合退職というのは社員の自主的な理由で退職届を持ってきて退職するケースで、一方で会社都合退職は今回ご説明してきた整理解雇のような理由から会社をやめざるを得なかったケースです。そして問題が起きやすいのが、失業手当に関してですね。

失業手当というのは、自己都合の場合よりも会社都合の場合の方がもらえるまでの日数が短いのですが、優しい経営者の方だと、辞める社員のことを思って会社都合としてあげてしまうケースがあるんです。しかしそれは非常に危険で、会社都合の退職が1名でも発生すると、助成金の種類によっては受け取れなくなるものがあるんですね。

すでに助成金を申請している場合でも、会社都合の退職があった場合は、遡って支給の対象から外れてしまったり、その先2年間はそういった助成金への申し込みができなくなったりしてしまいます。

 

さまざまな制度や法律、確認すべき要件を知らずにリストラに手をつけてしまっては、思わぬところで損害が発生してしまう可能性があります。そういった意味でも、専門家のアドバイスは必要だと思います。

 

 

――専門家への相談というのは非常に大切なポイントなんですね。向き合いたくない部分に向き合わなければいけない葛藤を抱えた経営者の方も多いでしょうね。

 

 

そうですね。まずはご相談だけでもいただければ、思わぬ落とし穴にはまることなく、企業再建に導く道すじを設計することができるはずです。

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