アフターコロナのといっても、コストプッシュインフレと人手不足が相まって賃金上昇。 会社の業績は遅々として改善が見込まれなかったとしても無理もありません。
経営者の方は政府による支援がない、行き届かない中で、 なんとか生き残り策を検討されているものと思います。
今回は、自力再生型の事業再生ではなく、事業を譲渡してスポンサーのもとで 再生を果たすときにどのような手続があるのかを前提として以下にご説明したいと思います。
スポンサー型事業再生について
以下に1~4の4つの選択肢を提示致します。実行に当たっての難易度も1~4の順番であると思います。
松竹梅のように1が選べる方は、1を選んだ方が良いです。
ただ選べない理由がある場合2→3→4とならざる負えなくなります。 しかし、生き抜くためのよりましな選択肢を選ぶのがリアルな経営判断です。
スポンサーの力を得ながらも事業継続の可能性を追求できるのだと感じて頂けましたら幸いです。
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活性化支援協議会
最大700万円までの補助が受けられる可能性があります。 (DD費用・計画策定支援費用・伴走支援費用) 標準手続期間が通常1年程度をかけての検討となります。 その為、資金繰りが1年以内に破綻する危険がある場合は、 活性化支援協議会での検討は難しい場合が多いです。 活性化支援協議会のサポートの仕組みとしては、 以下の3つの方法が用意されています①民間プレーヤーを活用した支援
中小企業の事業再生等に関するガイドライン等(以降中小版GLと記載) に基づき支援。 経営改善計画策定支援 中小版GL枠② 中小企業活性化協議会自身による支援
中小企業活性化協議会実施基本要領に基づき支援1. 再生支援(従来の二次対応に類する支援)
収益性のある事業はあるものの、財務上の問題がある事業者が対象。 事業者は、専門家の助けを借りて抜本的な再生手法を含む再生支援を実施。③再チャレンジ支援
事業継続が困難な中小企業、保証債務に悩む経営者等が対象。 円滑な廃業・経営者等の再スタートに向け、 中小版GLや経営者保証GL等を活用し、弁護士等の外部専門家がサポート。
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事業再生等ガイドライン
私的整理ガイドラインが新たに事業再生等に関するガイドラインとして
2022年4月より廃業型スポンサースキームが定義されています。
廃業を前提とした場合にも、金融機関への協力を求めながら手続をすることが可能です。
①資金繰り等で検討時間が短い場合、外部専門家、第三者支援専門家の確保が難しいと考えます。 リストは中小機構により公開されておりますが、 弁護士74名・会計士31名・その他の専門家18名が登録されております。 人選については時間的・費用的な制約から選択の難易度は高いと考えます。
②活性化支援協議会の仕組みの中でしか使えない方法では無いものの、 慣れていない経営者だけで本手続を行う事は難しく、
支援に手慣れた弁護士の関与が無い場合は、活性化支援協議会の枠組みの中で 事業再生等に関するガイドラインを使用する事が現実的です。
特定調停
最も選びやすい選択肢と考えます。費用が安価であり、会社所在地の簡易裁判所で手続を行う事ができます。
①一体型の手続が可能
法人と個人について廃業型スポンサースキーム(法人)と経営者保証ガイドライン(個人)について一体型の手続が可能です。
②特定調停のメリット
1.取引先を巻き込まないことが可能である事
2.裁判所の関与による公正性・妥当性・経済合理性の担保
3.「調停に代わる決定」(17条決定)による解決が可能である事
4.保証債務との一体整理が可能である事
5.税務面での配慮がある事
6.費用が低廉である事
③特定調停のポイント
1.対象債権者全員の同意が必要となる
2.優先債権等の弁済(税金を完済できる案でないと成立が難しい)
3.他の債権放棄等の要請を含む計画の場合は、経営責任・株主責任の明確化を図る。
④廃業支援型特定調停(簡易裁判所)
申立に当たっては以下のポイントを説明する必要があります。
(ア) 対象債権者及び保証人について
(イ) 対象債権者について
(ウ) 債務整理の目的
(エ) 法的倒産手続(破産など)がふさわしい場合でないこと
(オ) 経済合理性
(カ) 優先債権等の弁済
(キ) 事業者(主たる債務者)の再生計画案
(ク) 保証人の弁済計画案
(ケ) 事前協議及び同意の見込み
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破産
①破産と言っても事業を廃止するだけで無く、スポンサー型でプレパッケージ型を検討し、 破産前譲渡、破産後譲渡など特色に応じての検討は可能。破産申立費用の準備が必要。
まとめ
特定調停は語られる事が少ないため、少し網羅的に説明いたしました。
自力再建を諦め、スポンサー型で事業再生を検討しようとしても重要なのは資金繰りです。 スキーム検討のための時間を作り出すという意味でもそうですし、選択肢が広がるか否かという視点でも、
a.債権者数を増やさない
b.金融機関以外の債権者を増やさない
c.租税債権の債権者を作らない(税務署・年金機構)
というの3つは大事です。
私的整理が成立するかどうかは、債権者全員の合意がポイントになります。
金融機関は再生に協力的な債権者ですが、
仕入先やリース会社、サービサー、事業者金融などが債権者に広がれば協力が得にくくなります。
また、租税債権へは私的整理の場合、全額弁済が前提となるため
租税の延滞が広がれば法的整理以外の検討が難しくなります。
死中に活をあり。苦しくても苦しくても打つ手を諦めないでください。
コロナは天災です。ご自身を責めることなく、生き抜いてください。