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現状維持バイアスと事業再生

現状維持バイアスと茹でガエル

 

 

人は大きな変化や未知の体験を避けて、今の状態をそのまま維持したいという心理が働く

これを現状維持バイアスと言います。事業再生は現状維持バイアスとの戦いです。会社の

損益が悪化し、資金繰りに支障をきたし、倒産前夜の様相を呈したとしても、驚くことに

混乱を生じてまで組織を変革しようという機運は湧き上がらないのです。

 

茹で蛙」を生む構図です。現状維持バイアスは恐ろしいもので、もしかして自分や会社組

織は茹でガエルになるのではないか!?と認識しても、現状を改める事無く滅びの道をひた

走ります。茹でガエルにも種類があります。様々な茹でガエルを事業再生の現場で見て参り

ました。崩壊していく組織であっても、

“現状にある種の安住の地としての幸せや納得を感じているケース”

“恐怖や怯えから新たな道を選択できないケース”

“精神的な病や身体的な病など心身の問題から動けないケース”

“現状を死ぬまで守り抜いて死ぬと言う覚悟を決めているケース”

などの茹でガエルの類型を見て参りました。

 

現状維持バイアスは人間の特性であり、DNAに刻まれているプログラムであり打破するこ

は中々に難しいのです。

 

組織風土と現状維持バイアス

賃料減免

 

会社には組織風土というものがあります。様々な人の思惑と行動が個人レベルでの意図を越えて

組織風土を生み出し会社に定着しています。現状維持バイアスは組織風土と密接な関係性があり

ます。良い風・悪い風と様々にありますが、組織風土を生み出す要因を早めに特定しなくては、

現状維持バイアスの打破=組織風土改革はできません。

 

場合によって、事業再生の現場となる会社においては、組織風土が風土病を生み出していることが

あります。風土病(隠蔽体質・長時間残業・精神疾患に苦しむ従業員が多発・新たなチャレンジが

できず無気力・新入社員、中途採用者がすぐ辞める・いじめ・パワハラ・セクハラ・労災など)と

して、会社に対して実際にトラブルの種となっている事もあります。資金繰り問題以外に事業再生

の必要を感じる問題点です。

 

成功する改革は全体最適

事業再生において現状維持は衰退と破滅を意味します。現状が維持できなくなる現象を事業再生だと

言い換えることもできます。維持できない現状を維持する事は不可能なのです。事業再生という現状

を変える仕事は必ず反対者を生みます。会社に関連する当事者である、従業員、経営陣、株主すべて

を敵に回して望む事業再生による成果を上げることはできません。

 

あらゆるステークホルダーの協力を引き出すためには、ポイントがあります。現状を変化させることで

現実が改善される手応えを一人一人に感じていただく事が大切です。その為には、事業再生で最初に

着手するのは、成功確率が高く、効果が大きく、最も早く着手できることにターゲットをしぼります。

 

改善改革となると肩に力が入り「あらゆる会社の膿を出し切ろう!」・「問題点は全て挙げろ!」と

なりがちです。これは大変危険なことです。網羅的に問題を指摘し、策を検討するのは良いのですが、

一斉に手をつけると、あらゆるセクションで抵抗運動が起こり改革が頓挫します。優先順位が大切な

のです。

 

1つの改善の手応えを組織が実感し、また次の改善に進む、成功する改革は必ずこの形です。成功する

改革とは全体最適の達成を目指すものであり、網羅的に改革に着手すると部分最適の山ができあがり

資源のムダが生じます。現状を声高らかに否定し批判しても、現実は何も変わりません。事業再生が

1つの成果を掴まえる中で一人ずつ味方を増やします。その連続を行う事で、より大きな改革に着手

できる土台を整え、次の成功を掴みます。

 

内部改革には難しい理由がある。トップによる改革を。

 

一人一人の人間と組織を構成する集団の思考は異なることがあります。事業再生に陥る会社が

、危機に陥るまでその予兆に気がつかないかと言うと必ずしもそうではありません。組織には

優秀な人材もいます。そのような人材が、カナリアとして「危機を知らせ」改革がテーマとなり

、トップが組織を動かそうとすることもあります。

 

しかし、現状維持バイアスにより、やはり組織は変化しません。内部改革は本当に難しいのです。

現状否定を組織に属する人間にさせるのはほぼ不可能であり、酷な話なのです。会社が今の形に

なったのには、今の形になったなりの理由があります。

 

「これは誰が作った制度」・「これは誰が作った商品」・「これは弊社の祖業」・

「おまえに変えて良い事じゃない」と一つ一つの事象には思い出があり、それを大切にすること

で組織を維持してきた為、組織的に改革者が批判され潰されます

 

内部改革を評価するインセンティブ設計が無いことも、推進力不足の原因となります。現状を替え

ることが人事制度上の評価につながらなければ、「額に汗して他人より頑張る」・「現状を乱して

人の批判を浴びる」事が評価される仕組みになっていないのです。

 

その為、事業再生は時間的な問題もあり、人事制度改革を同時並行して行くのは現実的では無く、

スピーディーに即断即決しなくてはなりませんので、社長自らトップダウンで改革を推し進める

必要があります。

 

現実を変化させるのは誰なのか?

 

 

資金繰りが成り立たず、会社がつぶれる直前でもリストラに反対する人が従業員や経営陣にも

出ます。他に現状を打開する代案の提案もなく、目の前に危機が見えても、まだ見ぬリスクを

盾にして現状を維持しようとさえします。

 

ネクタイしめた高給取りが現状を変える事無く、机に座って偉そうに会社を食い物にし続ける

のです。偉そうにしているだけの人たちは、一見正しそうな理屈を様々に述べますが、彼らは

現実を1ミリも変えていません行動によって評価されるべきであり、行動が伴わない勢力の

弁舌に惑わされてはなりません

 

中小企業は優秀な人材の確保が難しく特定の人物に経営の重要部分を任せすぎる事があります。

「○○さんがいないとこの会社はダメ」という台詞が聞こえる会社は危険です。社長は特定の人

物に依存しないように経営の舵取りをする必要があります。

 

事業再生では、評判の良いそのようなコア人材が、現状維持を望み変革を拒否し、逆に再生を

阻むネックとなるケースもあります。そのような傲慢な人材が明確に反旗を翻す時は、訓告戒

告も含め人事制度上取り得る処分も検討も致します。

 

大変な会社でも現場は、パートやアルバイトのオバちゃん達が守っていることもあります。健気

な姿に感動を覚えることもあります。しかし、矛盾を抱えた組織が個人の力で長く、存続するこ

とはありません。現状が維持されている足場はもろく風前の灯火です。危機において、本当に価

値のある仕事は誰がしているのかを見定め、組織体制や権限を見直します。

 

 

情報開示と経営改善計画により現状維持バイアスの打破を約束する

 

社長は会社の現状を正直に従業員へ伝えることを恐れます、

「批判されやしないか」

「今、従業員に退職されてしまうと仕事が立ち行かない」

「取引先に飛び火し信用不安につながりやしないか」

と。しかし、従業員は薄々経営危機に気付いています。会社が苦しい現状は、実は現場に近い

従業員が一番よく知っています。

 

ある案件で私は「このまま行けば御社は一年の命です。」と、全従業員の前で経営改善計画と

共に伝えた事があります。なんとなく現状がまずい事は感じている、漠然とした不安が社内に

渦巻く中で、改善計画と共に現状認識を共有することができれば、社員は団結して危機に対応

できます。

 

背水の陣を引く事で、従業員の間に覚悟が生まれます。ポイントは経営が元に戻る方策を持っ

ているか否かです。またそれを、社長と従業員が共に信じられるか否かです。社長自身の認識

が「やるべき事はやっている」では先が見えません。

 

現状維持バイアスを乗り越えるためには、日々の連続性からかけ離れた痛みを伴う構造改革が

必要なのです。再生フェーズでは現状維持こそが最大のリスクと認識することが大切です。

なぜなら、事業再生は日常のタスクをクリアしても事業再生には成功しないのです。

 

企業経営に混乱はむしろ望ましいとのメンタリティが必要です。痛みは新たな成長の伸び代で

あり、現状維持バイアスを組織が越えようとする成長の萌芽なのです。例えば、トヨタ式では

ラインが安定すると意図的に人を抜いて、混乱を生じさせます。大企業のトヨタにも部分的に

中小企業でも学べる所があります。茹でガエルの状態での安住に価値はありません。

 

現状認識から会社の強みを再認識し、創造的に破壊しながら再構築する。会社を縮小させ必要

な機能に純化する、そして成長の萌芽を見つけ出し成長させる、この作業を繰り返します。自

分の地位を守るだけのポジショントークを繰り返す人にはできません。現状の問題やこのまま

では続かない感覚に気付けたなら変われるはずです。

 

事業再生に陥った会社だけが変化を求められるわけではありません。あらゆる会社は変化し続

け無ければ、生存競争を生き抜けないのです。事業再生に着手する時は、会社の現状がいかに

末期的であり、現状だと資金繰り的にも破綻が確実であるかを検証します。

 

逆説的ではありますが、会社に関連するあらゆるステークホルダーの理解・納得・協力を得る

ためには必要なプロセスです。また同時に必要な改革を施し、支援があれば確実に再生できる

のだという経営改善計画書を同時に示す必要があります。

 

こうして、計画を基にトップの決断により、トップダウンで事業再生を推進します。情報開示

により多くの人間を巻き込み、協力を引き出し、実践することにより始めて現状維持バイアス

打破されるのです。

 

社長が推進する現状維持バイアスを打破する方法はイメージがついたでしょうか。なんとなく

わかったけど、社長自身が本当にやるのか?と思われた方も多いと思います。その場合は、日

常の連続とは異なる決断として認定事業再生士へ依頼してはいかがでしょうか?

認定事業再生士に依頼すると言うことは、現状を変えることを決断し覚悟したと同義です。

現状維持バイアスの打破に手慣れたプロフェッショナルが案件に対応します。

 

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