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リスケジュールの申し込みが意味すること
事業再生が必要な会社は、リスケジュール(返済緩和)を申し込みます。
1度リスケジュールを申し込むと、契約時に設定された期限の利益は前提とならず、
当初の借入期限とは異なり、会社の状況に合わせて金融機関と協議しながら
3ヶ月、6ヶ月、1年の期間、返済緩和を認めてもらい、期限の利益を設定する為の折衝を行う事となります。
いわば銀行管理の状態になるのです。
リスケジュールの1年目は元本返済を0円とする返済猶予をまとめることは、
金融円滑法(現在は廃止も、精神は受け継がれている)以来、原則として難しいものではありません。
では、2年目以降どうするのか?
教科書的には「収益力の回復の範囲内で弁済を再開する」事となります。
これを収益弁済(PLよりの利益から約定返済を設定すること)と言います。
一方で、金融機関が考える合理的な返済額の設定は、
バンクミーティング(融資をしている金融債権者が集まる債権者集会)での主要議題となります。
一つのセオリーとして営業CFの80%が目安と言ったりしますが、
個別の案件次第だと言うのが、今日のメインテーマです。
当然、営業CFの80%も返済してしまうと、
設備投資が必要な会社の場合は投資CFを捻出することができません。
結果として、投資CFの捻出はできません。(できて20%だけという事になる)
新たな技術革新にキャッチアップする事はできず、老朽化する設備を使い、
故障した際も買い替えることが困難な状況になります。
投資CFの必要額は会社のステージや、スピード感により変わります。
銀行主導の再建案とは?
銀行主導の事業再生がたびたび上手く行かないのは、
営業CFと財務CF(ここでは調達の意味では無く、返済の意味)を
均衡させる事しか頭にないからです。
金融機関は預金者保護や、預金者への責任から、
1円でも多い回収を希求する生き物です。
その生態として、目一杯返済させる生き物なのです。
ですが、企業の命脈を保ち、次の成長軌道に乗せるには投資CFが肝心です。
リスケジュール中であり、銀行管理の状況でも、
生き馬の目を抜く過酷なビジネスの世界では、
顧客へアジャストするためにも投資CFの維持は不可欠なのです。
ですが1円でも多い返済を希求する金融マンにとって投資CFは、
時に金を燃やしているかのようにしか思えないのです。
成果に結びつくか不明であり、その投資により返済が増えるかどうかわからないからです。
今、得られている営業CFは過去の投資CFが生み出しているという、真っ当な理解が大切です。
投資もせずに経費削減だけで、企業の業績を回復させ、返済再開を目指すことは難しいのです。
返済再開のためにも、売上を向上させるのに役立つ改善活動をする事が大事です。
それをいかにしてリスケジュール中に実行するかが大事なのです。
ですが1度リスケジュールを依頼した会社の多くは、慢性的な資金不足となり、
資金繰りを維持するのがやっとの状況で新たな手が打てません。
リスケジュール中に投資を認めてもらった事例
リスケ期間中に銀行と協議をして投資を認めて頂いた事例をご紹介します。
資金不足を理由に無策のまま、競合に負けてしまわないように参考になさってください。
【メーカーA社】
月額2,900万円の返済をしていたA社返済を進めながら、いわゆる財務償還の状況(借りて返す状況)でした。
銀行から折り返し融資をもらい返済ペースを維持していました。
しかしながら、与信判断に変化があり、銀行が折り返し融資を拒否、
結果として返済が継続できずリスケジュールを申し込みました。
1年間元金ゼロ円、その後も月額100万円で1年間、
150万円に増額して1年間と返済額を増額しながらもリスケ継続中です。
この間にも、新製品製造のための金型代2000万円、
パンフレット刷新のための広告宣伝費2000万円が
必要であると経営改善計画書に記載して理由を説明しました。
結果として、銀行に認めて頂き、
必要資金をリスケジュールによる
資金留保効果により蓄積し、実行しています。
【木工業B社】
月額1,300万円の返済をしていたB社。
こちらも銀行融資に依存しながら、財務償還により資金繰りを維持していました。
メインバンクの方針が変わったこと、
不動産担保の評価が下落したことにより、
新規借入が不可能となり返済が行き詰まったため、リスケジュール申込。
1年間元金ゼロ円、その後も月額100万円で2年間と返済額を増額しながらもリスケ継続中。
設備老朽化により修繕部品のメーカー在庫がなくなり、
他社で同種の設備の解体があると聞きつけては
部品を確保していたものの修繕費高騰。
万が一設備故障した場合は、納品先よりの供給責任違反として
営業保証などの損害賠償請求の可能性もありました。
経営改善計画書を作成し銀行に対し設備の維持更新が重要であり、
違約金を原因とした廃業の危険性があると説明し、
必要資金をリスケジュールによる資金留保効果により蓄積し、
6,900万円の設備入れ替え投資を実施。
新たな設備で安定操業できる環境を獲得しています。
【レジャーホテルC社】
月額350万円の返済をしていたがリーマンショック以後、
地元経済の凋落激しく来客数減少。
近郊のライバル店が続々値下げ合戦をしかけ、
客数・客単価とも下落し返済が難しくなり1年間元金ゼロ円のリスケジュール申込。
その後、メインバンクと社長、小職で
毎月一度の改善状況報告、資金繰り・試算表の報告会を設け、
銀行と二人三脚での経営改善計画書に基づく改善活動中です。
その中でも客数・客単価下落が止まらないが、
銀行との関係性も良好であり、説明も尽くしているため、
必要に応じて金利減免などにも踏み込んだ支援を頂いています。
資金繰りに応じた返済額を半年ごとに見直し収益力の範囲内での返済を行っています。
地デジ化対応のためのテレビ購入費5M。内装外装工事費3Mなど
競合店に勝つための最低限度の投資の必要性を説明し、
必要資金をリスケジュールによる資金留保効果により蓄積し投資を実行しました。
設備や客室の充実と共に、対応した値上げを実行し地域の値下げ合戦、
デフレに巻き込まれない状況を築きつつあります。
【パチンコD社】
競争環境の厳しいパチンコ業においては
新台導入ができるかどうかで、大きく収益が分かれます。
台が入れられなければ、どんな経営計画を立てても実現しないということで、
業界特性をご理解頂き経営改善計画において新台投資のための設備投資金額を
億単位で確保し銀行の了承を頂きました。
投資に必要な資金を生み出すために、リスケジュールによる元金の一部猶予と金利減免にご協力頂いています。
以上4社の事例を簡単にご紹介致しました。
リスケ中なのに新製品開発。
リスケ中なのに宣伝広告。
リスケ中なのに設備入れ替え。
リスケ中なのにテレビ購入。
リスケ中なのに億単位の設備投資。
ライバルに勝ち抜くための経営改善計画書に
いずれも常識から考えられないことかもしれません。
しかし、商売には常にライバルがいます。
リスケ対応に四苦八苦している間にライバルは先をいきます。
厳しい競争を勝ち抜いて黒字を出さなければ、返済再開は望めません。
その為には、投資CFの確保は大事です。
どの案件についても、金融機関との円滑なコミュニケーションが計画を後押ししました。
経営改善計画書を策定し、その説明を全ての取引行を一堂に集め
バンクミーティング形式にて実施するなど、コンセンサスの形成には十二分に配慮致しました。
当然ながら銀行は、投資する余力があるなら返済をしてくれと言います。
投資をすることで、将来にわたって安定的に返済を維持継続できるかを説明することが重要です。
それ無しに銀行が上記の例のような投資をたやすく認めてくれることはありません。
事業再生では『選択と集中』になりがちです。
投資CFがゼロになってしまうと、新たな事を始める余裕もありません。
しかし私は選択と集中では再生できないと感じています。
既存事業が110%を超える売上を上げるケースをみることはまずありません。
新規事業のプラスは純増であり、組織の力となり、人材を育成するチャンスともなります。
大きな予算の確保が難しい場合でも、新商品のリリースには挑戦してほしいです。
事業再生は、選択と集中による、縮小均衡の話に終始しがちです。
事業再生の入り口となるリスケジュールによる支援は、
止血作業(現金流出を止める)として、重要度は高いですが、
本質的な事業再生にはつながりません。
事業再生に成功する為には、売上改善努力と原価改善努力の両輪が必要となります。
事業再生の改善活動の中で削減し捻出した資金を、戦略予算として確保し再投資し、
売上や原価の改善の為の活動をすべきです。
事業再生のプロがする計画するリスケジュールの違いは感じて頂けたでしょうか。
ぜひライバルに勝てるリスケ期間が過ごせるよう計画ください。
そのためのお手伝いを弊社ではしております。ぜひご相談ください。